2026年秋、愛媛県松山市に誕生する「石本藤雄デザインミュージアム」が、2025年11月より建設工事に着手いたします。本プロジェクトは、フィンランドの代表的ファブリックブランド「マリメッコ」と陶芸ブランド「アラビア」を拠点に国際的に活動してきたデザイナー/アーティストの石本藤雄が、帰国後に手がける最大の創作活動であり、国内クリエイティブチームとの協働によって生活と芸術の融合を体現する拠点として誕生します。
「私の視覚的な試みが、見ていただく方の心に届けば嬉しく思います」石本藤雄
石本藤雄 (いしもとふじお)|1941 年愛媛県砥部町出身。1964年東京藝術⼤学美術学部⼯芸科卒業。1970 年にフィンランドに移り、1974 年から同国を代表するデザインハウス・マリメッコ社で32年に渡り、テキスタイルデザイナーを務める。1989~2020 年、フィンランドの伝統的な製陶所・アラビア社のアート部門にも属し、陶芸制作に取り組む。1994 年カイ・フランク賞受賞。2010 年フィンランド獅子勲章プロ・フィンランディア・メダル受賞。2011 年に旭日小綬賞受賞。2013 年9 月から10 月にかけて、故郷・愛媛で初となる個展「布と遊び、土と遊ぶ」(主催:石本藤雄展実行委員会)を開催。「道後オンセナート 2014」では松山市・道後のホテル、茶玻璃にて石本の作品に囲まれたオリジナルルームを展開。2018 年から2019 年にかけて、「石本藤雄展 マリメッコの花から陶の実へ」巡回展(愛媛展 主催:「石本藤雄展」実行委員会(愛媛県、南海放送)、砥部町・京都展 主催:細見美術館、京都新聞・東京展 主催:スパイラル/株式会社ワコールアートセンター)を開催。2020 年に愛媛に帰国。2021年愛媛県美術館にマリメッコで手がけた作品等約150点寄贈。2022 年に「蕾 - つぼみ-」、「花咲く」、2024 年に「花と実」「たいさんぼく」、2025 年に「桃」「芥子 -けし-」をMustakivi にて開催。
建築設計は、愛媛県今治市に自身のミュージアムをもつ、日本を代表する建築家・伊東豊雄が担当しています。石本の作品に通底する「自然へのまなざし」を踏まえ、自然の中で作品と共に佇めるような空間を目指しました。最大の特徴は、1階から3階までを貫くように林立する木柱の空間です。50年にわたり森と湖の国フィンランドで暮らした石本の生き方に敬意を表し、来館者をまるで森へと招き入れるかのような、大胆なデザインとなっています。
外観イメージパース
「豊かな自然の中で半生を生きてきた石本氏からミュージアムの設計を依頼された時、「建築の中にもうひとつの自然をつくりたい」と考えた」伊東豊雄
伊東 豊雄 (いとうとよお)|1941年生まれ、長野県出身。建築家。1965年東京大学工学部建築学科卒業。主な作品に「せんだいメディアテーク」「みんなの森 ぎふメディアコスモス」「台中国家歌劇院」(台湾)など。日本建築学会賞、ヴェネツィア・ビエンナーレ金獅子賞、プリツカー建築賞など受賞多数。2011年に私塾「伊東建築塾」を設立。これからのまちや建築を考える建築教育の場として様々な活動を行っている。また「今治市伊東豊雄建築ミュージアム」が建つ愛媛県今治市大三島においては、塾生有志や地域の人々とともに継続的なまちづくりの活動に取り組んでいる。(写真:©中村絵)
ミュージアムのロゴおよびVI(ビジュアル・アイデンティティ)は、アートディレクター・色部義昭(日本デザインセンター)が担当。石本藤雄が生涯にわたって追求してきた「自然」「静けさ」「かたち」へのまなざしを、視覚言語として丁寧に設計します。
ミュージアムのために開発されたロゴタイプは、石本の陶や布に繰り返し登場する果物や花に見られる“つぶれた丸”のかたちから着想を得ており、その独特な縦横比(約1:0.85)は、実際の作品の形状に基づいて導き出されています。また文字の末端は、果物のヘタを想起させ、文字ひとつひとつから生命感を感じられます。
どこか素朴で、やわらかく、そして慎ましやかに佇む文字たちは、石本作品の持つ不均衡や余白、整いすぎない心地よさと深く呼応しています。
「石本作品の造形性に呼応しつつ、作品図版に重ねても、並べても、ロゴ単体でも個性と可読性が際立つよう心がけました」色部義昭
色部義昭(いろべよしあき)|1974年千葉県生まれ。グラフィックデザイナー。東京藝術大学大学院修士課程修了。株式会社日本デザインセンターにて色部デザイン研究所を主宰。グラフィックデザインをベースに平面から立体、空間、映像まで幅広くデザインを展開。AGI(国際グラフィック連盟)メンバー、日本デザインコミッティー理事、東京ADC会員、JAGDA会員。東京藝術大学非常勤講師。主な仕事にOsaka Metro、国立公園などのVIデザイン、市原湖畔美術館、東京都現代美術館などの公共施設のサイン計画、Sony Park展などの展覧会グラフィックなどがある。2025年大阪関西万博では日本政府館のアートディレクションを担当。主な受賞歴に亀倉雄策賞、ADC賞、SDAサインデザイン大賞(経済産業大臣賞)、One Show Designゴールドペンシルなどがある。
まもなく着工し、本プロジェクトはいよいよ実現に向けて動き出します。
本ミュージアムは、愛媛の地域資源を基盤に事業を展開する株式会社YES LOCAL(代表取締役:大籔崇、株式会社FLOW ERSを含む5社グループ)が中心となり、設立いたします。株式会社FLOW ERSが所蔵する石本藤雄のコレクションを軸に、愛媛から東京、そしてフィンランドへと広がった約50年の創作の軌跡を通覧し、多世代の来館者が「美」と「生活」を見つめ直す場を目指します。石本が「Mustakivi」(運営:株式会社FLOW ERS)とともに続けてきた歩みの集大成となるプロジェクトです。
ミュージアムプロデュースは、これまで石本の大規模個展を開催してきた東京・南青山のスパイラル/株式会社ワコールアートセンターが担い、松山市や地元の皆さまと連携しながら進めてまいります。
地元の皆さまをはじめ、多くの方々にとって親しみと発見のある場所となるよう、引き続きご注目いただけますと幸いです。